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「ソフィー、君は今日までずっと、
 そのことを誰かに伝えたかったんだね。
 これからは、ステキだと感じたことは、みんなに伝えてごらん。
 きっと、聞いた人も幸せになれる…このぼくのようにね」


 ソフィーの目は、おどろいたようにパチクリしたあと、キラキラ輝きはじめた。あんなうれしそうなソフィーを見たのは、ぼくたちもはじめてだった。

 トムのときは、彼の目を見つめながら、アイスクリーム屋さんは、笑いをこらえるのに、たいへんそうだった。


「お父さんが、やっと白くぬりかえた家の壁いっぱいに、
 口から火をふく怪獣の絵を描いたとはね。
 しかも、高いはしごによじのぼって…
 もし、落っこちたら大変だったよ」


 トムは、叱られた子犬のようにうつむいた。すると、アイスクリーム屋さんはトムの顔をのぞき込んで、ウインクしながらこう言ったんだ。


「でも、あの怪獣は、サイコーにイカシてた!」


 トムがもらったアイスクリームが、どんなだったかわかる?そう、トムが描いた怪獣そのまんまさ。まるでいまにも動き出しそうだったよ!

 子どもたちは、つぎつぎにアイスクリーム屋さんの前に立って『いちばん楽しかった日』のことを思い出した。それから一人ずつ、ちがうアイスクリームをもらって帰っていった。だって一人ずつ、ちがう『いちばん楽しい日』をもっていたからね。

 太陽がすこしかたむいて、けやきのすきまから、チラチラとこもれびがゆれていた。

 いつのまにか、馬車の前には、もうぼくしか残っていなかった。


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