P.2



ところが、くる日もくる日もコポルは笛を吹きつづけましたが
ちっともうまくならなかったのです。

美しい音楽を 奏でるどころか
きれいな音のひとつも、まだ鳴らせずにいました。


村の人たちはもちろん、犬や猫たちでさえ
コポルが笛を吹くと、アッという間にいなくなってしまうのです。

それほどまでに、コポルの笛はひどい音しか鳴らせませんでした。


しかたがないので、コポルはだれもいない 村はずれの岩山で
笛のれんしゅうを していました。

岩山にころがる岩や石たちなら
さすがに笛を吹いても逃げ出すことはありません。

ただこの頃、コポルはすこし
笛を吹くのがイヤになりはじめていました。


「この笛に、かしの木の精霊が住んでいるんなら
 どうしていい音を鳴らしてくれないのさ!」

コポルはふてくされて、ごろりと岩山にねそべりました。

そよそよと夕風(ゆうかぜ)がふいてきます。
空は夕やけに、赤く染まっていました。 

しくしく…どこかで小さな子どもの泣き声が
かすかにしたのは、そのときです。



Next-->