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ただ、どのときのお月さまが、ほんとうなの?と男の子に言われて
ふいになぜだか、遠い、遠い、むかしのことを、思い出していた。

そう、はじめて、あの『太陽』と出会った頃のことだ。

目もくらむほどまぶしい、その輝きにつよくひかれ
以来わたしは、太陽のそばを、離れることはなかった。

太陽のまわりを回りながら、気がつくと、いつしかわたしも輝いていた。
もちろん、太陽のようにつよく、はげしい輝きではなかったが
それは、わたしにはちょうどいい、しずかな輝きだった。

遠くはるかな思い出から、わたしを引きもどすように、男の子の声がした。

「ほんとはね、どのときのお月さまが、ほんとうなのか?なんて
ぼく、どっちでもいいんだ。
  だって、どんなカタチのお月さまも、だい好きなんだもの!」

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