紫の雨 




テールランプを追いかけて
汚れた精神で今日も家路につく

ワイパーは忙しなく
しっとりと降る雨を払っている
キリの無いその場しのぎの動作でも
他に手立ても見つけられないから
続けるより仕方ない

ラヂオからはまた陰鬱なニュースが
深刻そうな声を媒介にして聞こえてくる
ひとつひとつ耳を疑うような衝撃的な出来事でさえも
1週間もすれば押し流されて
同じ黒い塊となって隅に澱む


何が正しくて
何が間違っているのか
もう僕には判らない

ふいに浴びせかけられる泥水
ゆるゆると脇を走るバイク
傘をさして走る自転車

つまらない事に乱されて
失意に漏らした溜息を吸い込めば
さらに息苦しくなる


循環する憂鬱
停滞する思考

投げ出したこころに映るのは


雨

雨

雨




紫の




雨




横並びのネオンは赤と青
目がチカチカするから大嫌い

だけれども
それらが交わり現れる色は
赤でもなく
青でもなく


フロントガラスを流れ落ちる雨粒は

僕の大好きな紫色


もう
いいじゃないか
何が汚れていて
何が正しくて
間違っていても


この紫の雨が綺麗だと思えるのなら




見上げれば
古びた電灯の先から

今

虹が架かる











comment 同じ風景の中にも 何処かに突破口があって きっといつだってやり直せる そんな気持ちを書きました poem ・ comment ・ photo by らい



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