雨の詠歌

Poem by セセラギ


今朝はもう騒がしく濡れたグラウンドの

タンタン鳴くベンチを眺めますと

傘に投げつけられた雫との

なんでもない2重奏が

遠く貴方の声のように思います


飽くことなく白球と戯れる少年達を

修羅のように湧かし

父のように見守る貴方を

その太く温かい腕にかかえられ

居心地よく見上げていました

張り上げる声はこの穏健な

雨のようでもあり 又

耳をぴったりくっつけて聞いた

貴方の心音のようでもあります


少年はすっかり立派な背広を着て

コツコツ踵を鳴らすこの頃に

この草むらに隠れたボールは

何故に貴方を思わせるのでしょうか

こんな泥の跳ねる朝だというのに

貴方はそこで笑っているのです

確かにこちらをじっと見つめ

いつでもここで笑っているのです






comment


友人の身内が亡くなったと聞いて大好きだった近所のおじちゃんを思いました
今でも思い出すのは夏の日差しの下にいた頃
息子しかいなかったせいか私を本当の娘のように可愛がってくれたおじちゃんの
一番大好きだった姿なのです


Poem & comment by セセラギ



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