「Foresthills '92」

Painting by Osamu Murata

 N.Y.に暮らした2年間・・その時期のほとんどを、わたしたちは“フォレストヒルズ”という美しい町で過ごしました。N.Y.市のクィーンズ区に位置するその町には、通称『ガーデン』と呼ばれる、とりわけ美しい住宅街があります。まさに森と庭園といった風景の中に点在する、ヨーロッパ風のクラシックな石造りの家々・・町全体が、統一されたポリシーに貫かれて造形されていて、今なおアメリカの都市計画の個性的な成功例として名を上げられる地域です。

 本来、留学生ごときに住める地域(家賃がべらぼうに高い)ではなかったのですが、ラッキーなことに(ほとんど奇跡といっていい)わたしたちは、ガーデンの中の三角屋根の家の3階フロアーを破格の家賃で借りることができました。下に住むオーナー夫婦(ポーランドから移民してきた老夫婦)が、とにかく強く『日本人』の間借り人を探していて、タイミングよく不動産屋をのぞいたのが“我々”だったというわけです。

 上の絵は、その『ガーデン』という地域に入るとっかかりにある広場のあたりを、ガーデン側から見た風景です。実際には、こんなに人がたくさんいることはめったにありませんが・・。

 家主さんのズコスキーさんは、毎朝、ガーデンにやって来るハトにエサをやるのが日課でした。家の周りの木々にはリスたちが遊び、窓から愛らしい表情を見せてくれたものです・・あの季節は、いまなお心の中で、木漏れ日のようにきらめいています。

Written by Akemi


Back to menu