少女とブランコ
Poem & picture by Akemi Murata





あの夏の日

少女は

ブランコをこいでいた



風にはためく

木綿のスカートは

空にこぎだすヨットの帆




入道雲は 夢のカタチ

ちかづいても ちかづいても

ちかづけない 天空にうかぶ島に似ている


あの夏の日


空にそよぐ憧れと 地上にのびる影の はざまで

宙ぶらりんの風をきって

少女はブランコをこいでいた




時の振り子は 記憶の海にブランコを沈め

やがて少女は大人になった




とある昼下がり 都会のかたすみ -児童公園-

ため息まじりに腰かけたブランコが

ギーコ ギーコ きしんだとき

かつての少女のココロも

きしむ



見上げればビルで切りとられた四角い空

ハイヒールとタイトスカートでは

空にこぎだすスベもない


けれど



少しブランコをゆらして また歩きはじめたとき


あの夏の日の入道雲が

もくもくと記憶の底からわきあがった



もうすこし あとすこし

宙ぶらりんの風をきってみよう


空にそよぐ憧れと 地上にのびる影の はざまで



あの夏の日からずっと

少女はブランコをこぎつづけている











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