Vol.8




言葉の羽根
―kotoba no hane―


何を書こう...

ナニガ書ケル?


ま白き紙の原野に

蜻蛉いっぴき舞い降りて

首をかしげた


言葉の羽根ばたつかせ

人は翔ぼうとするモノ


ドコへ?


シャワーのように言葉を浴び

ナイフのように言葉を放ち

ワインのように言葉に

酔いながら

気づけば

言葉依存症候群

 

言葉がなくては伝えられず

言葉があっても伝えられず


言葉の便利さに寄りかかり

言葉の未熟さに舌がもつれ


言葉の洪水に溺れ、言葉の森に迷い

言葉の刃に傷つき、時に傷つけ

辟易しながら、翻弄され

それでも人は言葉を

捨てない


書き記したとたん、聖なる原野が汚れても

放ったとたん、想いと違う場所に墜ちても


言葉の羽根ばたつかせ、人は翔ぼうとするモノ


たとえそれが錯覚だとしても

言葉のちから抱きしめていく


ふと、

白日夢のように

蜻蛉いっぴき、舞いあがった


果てしない紙の原野に

うずくまる者を

残して




Comment

「いのちのフォルム」シリーズに於いて、蜻蛉(カゲロウ)
これが二度目の登場です(今回はクサカゲロウ)

万年筆、白い紙、蜻蛉...
モノクロの美しい組み合わせを眺めていたら

こんな詩が生まれました。

Akemi

(このシリーズは、プロの写真家・飯島徹さんとのジョイント企画です)

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