「ボクはここにいる」
Poem by 美春
思い出なら昨日
ポストに入れておいた
空想なら昨日から
輸入雑貨店に売っている
君にハガキを書いたよ
ボクの居場所がわかるように
でも君がしあわせに包まれているなら
引き出しにしまっておけばいい
でもその前にそっと抱いておくれ
ボクがウソをついたことも
きっとボクの真実にほどかれる
誰でも年輪を重ねながら
なにかをあきらめていく
わかってるさ
あきらめながら紡ぐのが
平凡の美しさだって
浮かれながら散りばめる
ありきたりの言葉もね
でもありふれた午後
ショーウインドウのぞくと
想い描かなかった君がうつってる
君は波間にゆれる
とおざかる汽笛に
呆然と立ち尽くす
君の憂鬱 君のイラダチ
それはきっとボクの夢の中
君にはきっとわかってる
ボクがしばられているって
ボクにはきっとわかってる
君の思い...
夢の中のとまどい
ボクはしばられている
君はとまどっている
世界中が発狂している
虚栄心が街中を這う 君は
夜空の沈黙に耐えきれなくなって
太陽のおしゃべりがわずらわしくなって
雲が君の心を覆ってしまう
通り雨さえ君の涙になってしまう
夜空に星さえも見い出せず
しあわせの小径はジャリで傷だらけ
翼を開くには風が強すぎる
そんなとき...
君は凍える手のひらなぞり
ボクを探しに旅立つ
夜の毛布にくるまり
古びたハガキをポケットにさして
君をかばう人は誰もなく
君はうつろにさまよう
愛を持つ人でさえ
君に石を投げつける
君は木々に語りかける
(夢をなくしてしまいました)
(愛する人をなくしてしまいました)
(居場所をなくしてしまいました)
孤独な祈りがボクを解き放つ
愚か者にあがなう祈り...
ボクの荒野に血の轍を刻む
ボクは風に話しかける
(君のために夢を紡ぐよ)
(君のために涙を流すよ)
(君のために手袋編むよ)
君は小船をこぎだす
闇をくぐりぬけるために
荒波に飲まれ
コンパスはぐるぐる回る
なにをしているか
どこにいるかさえ
君にはわからない
嵐は容赦なく君を襲う
帆をたたみ
溺れるココロ
すべての君を
波にまかせてしまう
海面は鉄の意志を持ち
怒りを指揮する そして
絶望の歌奏でる
君は粉々に砕けていく
冷たい朝
浜辺には君
すりきれた君
なにもない君
翼の折れた雀のように
夢の尽きた幻のように
君はうつぶしている
ボクは君へかけていく
君へ夢をかけていく
君を横たえる
濡れた髪
冷たい身体
静かな吐息
ボクは暖炉にマキをくべる
もうひとつくべる
世界に終わりがこようとも
ボクは暖炉にマキをくべる
真夜中がとぎれるころ
君は静かに微笑んだ
(どんな夢を見ているんだい)
目が覚めて
ボクの姿を見たら
君はきっと驚くだろうな..
ボクは少しも韻をふまないから
土を踏み 大地を耕しているだけ
星を読み 夜空を描いているだけ
でも君の微笑みがこぼれたら
ボクはどうにでもなれるんだ
君がのぞんだとおりに
思い出なら昨日
ポストに入れておいたよ
空想なら昨日から
輸入雑貨店に売っている
そして
君はここにいる
未来は今日から
ボクの家に咲いている
海風がはねかえり
雨が苔を育てる地
ふたりで...
comment
「ボクはここにいる」
ソウルメイトというのはやはり存在すると思います。
「君がそれをのぞめばたどりつける」・・旅の途中、
何度かその”声”が聞こえました。
だから”君”はそこに向かう。それがわたしであれ、誰であれ...。
Poem & comment by 美春
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