■■■ 紫の雨 ■■■ テールランプを追いかけて 汚れた精神で今日も家路につく ワイパーは忙しなく しっとりと降る雨を払っている キリの無いその場しのぎの動作でも 他に手立ても見つけられないから 続けるより仕方ない ラヂオからはまた陰鬱なニュースが 深刻そうな声を媒介にして聞こえてくる ひとつひとつ耳を疑うような衝撃的な出来事でさえも 1週間もすれば押し流されて 同じ黒い塊となって隅に澱む 何が正しくて 何が間違っているのか もう僕には判らない ふいに浴びせかけられる泥水 ゆるゆると脇を走るバイク 傘をさして走る自転車 つまらない事に乱されて 失意に漏らした溜息を吸い込めば さらに息苦しくなる 循環する憂鬱 停滞する思考 投げ出したこころに映るのは 雨 雨 雨 紫の 雨 横並びのネオンは赤と青 目がチカチカするから大嫌い だけれども それらが交わり現れる色は 赤でもなく 青でもなく フロントガラスを流れ落ちる雨粒は 僕の大好きな紫色 もう いいじゃないか 何が汚れていて 何が正しくて 間違っていても この紫の雨が綺麗だと思えるのなら 見上げれば 古びた電灯の先から 今 虹が架かる
comment 同じ風景の中にも 何処かに突破口があって きっといつだってやり直せる そんな気持ちを書きました poem ・ comment ・ photo by らい