キンモクセイ

Poem by 高田成実


空には楽しそうに遊ぶ雲があって

ココにはまっすぐ進むワタシがいる



  
上にはトウメイな青があって

下には黄金の花が咲く



  
朝の空気と一緒に吸い込む香り

あの頃と全く同じで

少し泣きたくなった



  
何もない夜に描かれたココロは水の中

何もない朝に紡ぎ出された想いは霧の中

ワタシの想いを作り出すキンモクセイの香りは

日常の中へと

溶けていく



  
もう戻れないけれど

もう見えないけれど

もう辿れないけれど

あの時感じた想いは

確かにこの朝の中にあった


  キンモクセイの香りが包む冷たい朝に

今日のワタシがいた







comment


高校生の頃、通学途中の私の鼻腔をくすぐったあの香り。
冷たい風、赤い指先、冷えていく頬、隣で笑う友人、
規則的に動いていく私の足とそれに合わせて進む自転車。

色鮮やかなその光景に今の私はいないけれど、思い出す。

思い出せる。

キンモクセイの香りを嗅ぐ度に何度でも。

最近妙に昔の事を思い出すのは…、年とった所為か…?


Poem & comment by  高田成実(たかだなるみ)



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