「彩りの乱舞」

Poem by Takakatsu.T.


羽衣は虹のように美しいと

たたえる「月の宮の調べ」にのり

天女は月の宮へと帰って行った


羽衣の裳裾(もすそ)しなやかに揺らし

花をかざした袖ゆるやかになびかせて


恍惚とその姿を目で追う漁夫ひとり

三保の松原に立ち尽くし

天女が残した言葉を抱きしめていたという


「うたがいは人間にあり
    天にいつわりなきものを」


いま忽然と夜空に現れる

麗しい彩りの壮大な乱舞

彩りは

淡くあるいは濃く

ゆらりゆらりと

あるいは

疾風(はやて)の如く速やかに

空一杯にひろがり舞う

人々は天を仰ぎ

我を忘れてオーロラに見とれ

息をのむ


太陽の激情は

太陽風となって

1億5千万km彼方の地球をも吹き抜けて流れて行く

その流れの激しさを思えば

無視できる僅かの数の粒子が

地球の磁気バリヤーを潜りぬけ

磁力線に乗って北極と南極の

超高層大気圏に突入する

太陽から飛来した電子や陽子が

酸素や窒素の分子や原子と衝突するや

分子や原子は励起されて

緑、深紅、赤、赤紫、青、ピンク、橙などの色の光を発する

電子が入り込む仕方によって

カーテン形のオーロラとなり

あるいは

モザイク形で点滅性のオーロラとなり

天空360度を駆け巡る


宇宙創造の

ヴィジョンとシナリオが紡ぐ

壮大な詩(うた)の調べに合わせて

天上に展開する麗しき彩りの乱舞

その舞台こそ

大宇宙を泳ぐ限りなく小さな点


地球


生命を宿すただ一つの星


地球へ


天に舞う羽衣から

はるかなる愛の詩が届く






comment

年末年始のTV番組で、南極と北極でのオーロラ、そして南極での皆既日食の美しい
映像を見ることができました。それらに触発されてこの詩を創りました。なお、物語
『羽衣』は、広く日本人に親しまれていた伝説です。羽衣は鳥の羽で作った薄く軽い
衣で、天人はこれを着て自由に空中を飛行すると言われています。



Poem & comment by Takakatsu.T.

tallforest@vanilla.ocn.ne.jp


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