「おもちゃたちの自慢話」

written by つばさ




絵:川岡東小学校99年度・4年2組2班
(角川隆英、小柳祐季子、伴幸恵、森賢太郎、山名涼介)






マモル君は、おもちゃを両手いっぱいに持って、ママの所へ行きました。

「ママ、おもちゃたちがね、『ぼくたち、ボロボロになったから、

もう捨てちゃって、新しいおもちゃ買ってもらってよ』て言ってるの。

ママ、どう思う?」

「へえ、そうなの?どれどれ、ママも聞いてみるわね。

ふむふむ、おかしいわね?おもちゃたちは、

『マモル君のそばにいたいよ!捨てないで!』て言っているわよ」

 マモル君は、にっこりと笑って、

「ママ、おもちゃの声はね、子供にしか聞こえないんだよ」

と言いました。

「えっ、そうなの?宝物みたいに、マモルが大切にしていたの、

知っていたから、そう聞こえたのかしら…。

あのね、おもちゃ病院で直すこともできるんだけど、どうする?」

「おもちゃたちはね、『ボロボロになるまで、いっぱい遊んでくれたから、

もう捨てちゃっていいよ』て言ってるの」

「そうなの…。おもちゃたちが、そう言っているんなら、もう捨てましょうね」

 マモル君は、新しいおもちゃを買ってもらえることになりました。

でも本当は、おもちゃの声が聞こえるなんてウソでした。



その日の夜、マモル君が目をさますと、

「静かにしないと、マモル君が起きちゃうよ」

という声がしました。

うっすらと目を開けると、おもちゃが回りに集まっていました。

マモル君は、気づかれないように、黙っていました。

「もう、お別れだ、ワン」

 犬のぬいぐるみが、悲しそうに言いました。

「ボクタチ ヤクメ オワッタ」

 ロボットが、さびしそうに言いました。

「いっぱい遊んでくれてありがとう」

 男の子の人形が、涙をこらえて言いました。

「ぼくは、マモル君の初めて買ってもらったおもちゃだから、

別れが一番つらいよ」

 クマのぬいぐるみが、ため息をついて言いました。すると、

「一番つらいのは、ぼくだもん!」

 男の子の人形が、怒って言いました。

「ぼくが一番つらい、ワン!」

 犬のぬいぐるみも、怒って言いました。

「ボク イチバン ツライ」

 ロボットも、怒って言いました。まるで、ケンカのようでした。

クマのぬいぐるみは、あわてて、みんなに謝りました。

「ごめん、ごめん。そんなつもりで言ったんじゃないんだよ。

ねっ、それより、マモル君と遊んだ楽しい思い出話をみんなでしようよ!」

 みんなは、仲直りをしました。

 思い出話は、買ってもらった順番にすることになりました。



最初に買ってもらった、クマのぬいぐるみが話し始めました。

「ぼくは、マモル君が赤ちゃんのときに、買ってもらったんだよ。

マモル君は、ママがそばにいないと、すぐに泣いちゃうから、子守り役にね。

マモル君、ぼくに抱きついては、よだれを顔にくっつけるんだよ。

だから、この顔の大きなシミは、たくさんかわいがってもらった証拠なんだ!」

 次に買ってもらったのは、犬のぬいぐるみでした。

「ぼくは、マモル君の犬嫌いを直すのに買ってもらった、ワン。

だから最初は、ぼくを殴ったり蹴ったりした、ワン。

とっても悲しかった、ワン。慣れてくれたころには、体がキズだらけになってた、ワン。

だけど、慣れてからは、とってもかわいがってくれた、ワンワン!」




 


次に買ってもらったのは、ロボットでした。

「マモル コワイユメ ミテ ヨクナイタ。ボク ツヨソウ ダカラ カッタ。

イツモ ネルトキ コワイユメ ミタラ タスケテ 

ソウイッテ ボクノ ウデモッテ フリマワシタ。

コワイユメ ミナクナッタ ケド ボクノ ヒダリウデ トレタ。

デモ マモル アリガト イッパイ イッタ」



 最後に、男の子の人形が話し始めました。

「マモル君は、ひとりっ子で、とても甘えん坊だったけど、

ぼくを買ってもらってからは、違うんだよ。『ぼくはもう、お兄ちゃんなんだから』て言って、

何でもひとりでするようになったの。それにね、外で遊ぶときだって、ずっと一緒だったから、

こんなにひどく汚れてるんだもん!」



マモル君は、布団から飛び出し、おもちゃたちを抱きしめました。

「もう捨てるなんて言わないよ!ぼくの大切な宝物なんだから!」

おもちゃたちは、おもちゃ病院で直してもらいました。

おもちゃたちは、マモル君と楽しい思い出をいっぱい作ろうと思いました。

また、自慢話をするために。




<おわり>






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「おもちゃたちの自慢話」


 1999年の4月に、新設されたばかりの桂川園に入所しました。桂川園の前には川岡東小学校があり、年間を通じて盛んに交流しています。運動会や学芸会、大型紙芝居に川岡東祭り、イベントがあるごとに招待してもらっています。太鼓の演奏に、桂川園に何度も足を運んでくれたりもしています。他にも、いろいろと 交流しています。ただ残念ながら、桂川園は新設されたばかりなので、イベントに招待できるようになるのはまだ先のことです。それでも、何かできないかと思っていたところ、2000年の2月に、(1999年度の)4年2組の授業の中で、体験談を話してもらえないかと依頼されました。僕は、喜んで引き受けました。でも、体験談を話すのは初めてのことでした。体験談を聞く子供たちの表情は、真剣そのものでした。体験談の中で、詩や童話を書いていることをお話しました。これがきっかけで、絵本が誕生したのです。

子供たちからもらった絵本は、僕の宝物です。

この「おもちゃたちの自慢話」は、そのなかでもいちばん、
子供たちに人気が高かったものです。

なお、子供たちが創ってくれた絵本たちは、友人のHPにあります。
よかったら他の作品たちにも会ってやってください。

注)そのHPでの作家名は木村 善男(本名)となっています。

友人のHP内にある「絵本目次」ページ

同HPにある「子供たちに話した体験談」のページ



Story & comment by つばさ


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