さあ、散歩だ!
赤いチューリップにまず出会った。
庭中の花が咲き誇っている。
白樺の木にも、
やわらかそうな(うまそうな)
葉っぱが芽吹いているぞ。
う〜ん、いい風がふいて、
じつにいい気持ちだ。
人間はこの季節、花粉症とやらになる者もいるらしいが、
おいらは、ぬいぐるみだから大丈夫だ。

うん?この白樺の小径を行ったところに、誰かいるぞ・・。
おいらは、白い石像に出会った
きみはだれ!?
「ぼくは庭の哲学者さ」
雨風にあたって少し汚れてはいるが、
彼はなかなかのハンサムだ。
どこか物思いにふけっている・・。
なにを 考え込んでいるんだい?
「春は あまりにも明るいから、憂鬱(ゆううつ)なのさ」
ゆううつ?
それは、まだ 食ったことがない。

彼が、こんなにも
思い詰めているんだから
“ゆううつ”というのは、
さぞかし、うまいもんにちがいない。
こんど見つけたら、
おいらにもご馳走して
くれるように告げて、
おいらは、庭の哲学者と別れた。