秋の指さき

Poem & Photo by Akemi Murata


すきとおった秋の指さきが

山の頂きにそっと触れたから

その狂おしい色彩の連鎖は

はじまったのか


うつくしき加速にのみ込まれ

樹々たちは たゆたい

さわさわ ざわめき

彩りのさざ波を

ひろげながら

河のごとく

ふもとへ

いっき

流れ



ただ、染められたのか

それとも

染まりたかったのか


しんそこ秋にいだかれ

色うずまく谷底から

たちのぼるのは

いのちの

うた



めくるめく祭りが終われば

くっきり微笑んだまま

葉は

はらり

散るだろう


そうして

いちまい いちまい

樹々の根もとに降り積もり

あたたかな 羽毛のように

樹のいのちを 抱きしめる



それを「犠牲」と

よぶのは、よそう


そんな

薄っぺらな

ことじゃない


葉は、散り落ち

ふたたび


生きる










Comment


東京から那須高原に移り住んで、はじめて迎える「秋」。
こんなに秋に染まり、秋をふかく感じたのは、何年ぶりでしょう。

詩に添えた写真は、阿武隈川の上流の森と
わが家の庭(那須高原の森のなか)で写したものです。

秋は淋しいとか、葉がはらはら散ると感傷的になる・・と
よく耳にします。でも、ほんとうにそうでしょうか?

秋には、春にも劣らぬ「いのちの賛歌」が、聴こえます。

そう、聴く気になって、耳を澄ませば....


aki ni dakarete....
akemi in autumn.2001.


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