「絵本カフェ」News 3

私(村田明美)の詩に、故・石丸 寛(いしまるひろし)先生が作曲してくださった楽曲
「ふるさとの匂い」が収められた、「鎌倉芸術館歌曲集」が、2001年秋
出版されました(財団法人「鎌倉市芸術文化振興財団・鎌倉芸術館」発行)。


  


 詩「ふるさとの匂い」は、1994年、第二回「鎌倉芸術館歌曲作詞コンクール」に応募したもので、全国から「ふるさと」というテーマで集まった2,686作品の中から12点が入選作品として選ばれ(審査委員長・なかにし礼、審査委員・さだまさし、谷村新司、吉岡治、山上路夫)、選ばれた12点の入選作品は、それぞれプロの作曲家の方たちに作曲が依頼され(服部克久、中田喜直、湯山昭をはじめとする日本を代表する12名)ました。私の詩には当時、指揮者であり作曲家であった石丸 寛(いしまるひろし) 先生が、どこか悲しげでやさしい雰囲気の神秘的な曲をつけて下さったのですが、先生は、当時すでにガンに倒れ、ご闘病中でした。病気のために「コンクール受賞曲発表コンサート」に立ち会えなかったこと無念に思われ「詩を生かしきれる歌手を、作曲者として責任もって選ぶべきだった」と、私に詫び状まで送って下さいました(どうやら、コンサートで「ふるさとの匂い」を演奏した歌手が、外国のオペラ歌手だったため、日本語の発音が不明瞭だったこと、テープで後から聴かれ、ひどく残念に思われたようです)。

 このことがあって、先生からは“もの創りに関わる者の姿勢”を教えていただいた気がします。石丸先生は、晩年まで長きに渡り、市民によるベートーベン『第九』の大合唱の活動に精力を注がれていたと聞いています。それは中国で生まれ戦争を体験された先生の、平和への祈りでもあったのでしょう・・最後まで、真摯なプロ意識をもち、人としての真心のある素晴らしい方でした。歌曲集出版の年に、先生が生きていらっしゃらないのがとても残念ですが、こころからご冥福をお祈りしたいと思います。先生、ありがとうございました。この曲は私の宝物にさせていただきます。



故・石丸 寛 先生


 また、鎌倉芸術館で開かれたコンサートの際にお目にかかった中田喜直(なかたよしなお)先生も、今は天国に旅立たれてしまいました。お二人とも日本の音楽界、いえ、ジャンルを越えた「大衆のための心の音楽」を一生かけて追い求めた方たちだったと思います。そういう偉大な方たちに、たったひとつの詩が、一瞬でも引き合わせてくれたこと・・その不思議も、思わずにはいられません。

テロ、戦争のきな臭い匂い・・不穏な時代の空気が流れる今こそ、つよく思います。
『創作は無力じゃない。芸術は人の美しい面、可能性をよびさます』

そう信じ、かすかな希望の火を灯しながら、創りつづけて生きましょう。

2001年 秋 by akemi


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