連作・絵ポエム『記憶の森』より

Vol.1
春を創りし者のために

詩・Akemi Murata  絵・Osamu Murata

『わたしは春の妖精 永遠にあなたとは めぐり逢えない 春の妖精』

咲きそめた花びらを水面に浮かべて妖精は語りかける ひとり逝ってしまった冬の王のために 
透明な水は 孤独な王の涙

氷の剣をキラリと抜いて
最期の時に彼がはらった
白い山頂の雪が
いま 流れ流れて 
春にたどりついた

『あなたの淋しさが あなたの強さが この春のきらめきを創り出したのです 閉ざされた白一色の世界のなかで 見つめつづけたあなたの夢が 色とりどりの花を咲かせるのです』

妖精が 水面にバラ色の頬を映すと
雪どけ水が やわらいで キラキラとささやいた
それは 冬の王から届けられた『愛の手紙』

妖精は微笑んで 春という名のパレットで
大地のキャンバスに生命の詩を描く

春を創りし者のために

     

  

連作・絵ポエム『記憶の森』Vol.


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