日々の底で

Photo & Poem by Akemi Murata

日々の底で

目を閉じ耳を澄まし

五感の根、張りめぐらして


いっぽんの木になろう


記憶の水脈から

思い出の残照くみ上げ

遠いきらめきに心をひたす


キルトの切れ端のように

ひらひら舞う

過ぎた日の欠片たち


午後のまどろみ まな板の音

水たまりに映る空 靴箱のラブレター

教室から見ていた雨 プールのカルキ臭さ

草いきれ 厚ぼったい制服 若さの気怠さ

書きあぐねた言葉 書きそこねた言葉

伝えたい想い 伝えられない想い

傷つけたこと 傷ついたこと

愛されたこと 愛したこと

ひかりの匂い 風の行方

人肌のあやうさ

ひだまり

夕映え


ひとつのこらず

降り積もって

わたしに

なった

から


目を閉じ耳を澄まし

五感の根、張りめぐらして


いっぽんの木になろう


なにげなく過ぎていく


日々の底で





Comment


忘れてしまいたい思い出のない人なんて

きっといないでしょう。でも、思い出のどれもこれも

パッチワークやジグソーパズルのワンピースみたいに

いまの自分をつくってる、一部なんですよ

捨ててしまいたい思い出の欠片も

とりあえず、とっておきましょう...か?

Akemi



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