Vol.7




風の詩
―kaze no uta―



海にうかぶ

一点の小舟のように

羽根という名の

帆をひろげ


蛾いっぴき


風に漂う


はらはらと花びらをちらし

ざわざわと砂塵をまきあげ

風はどこに向かうのか


だれひとり

風の行きつく先を 知らない

風が生まれた処も 知らない


それでも風は旅をつづけ

あらゆるものに触れていく


永遠の旅人

風にもしも言葉があれば

風にかなう詩人はいないだろう


音楽のひとかけらが 魂を蘇生させるように

ひと吹きの風が涙をちらし いのちの火を起こしていく


ちいさき羽根に刻まれた

星空の紋様ひるがえし

風にのった、蛾


ふわり


いのち瞬く






Comment


一枚の白黒写真のなかに吹いている風が
こんな詩を書かせてくれました。

今回の主人公は
(ガ)というより、むしろ「風」です。
カタチがなく、とらえどころのない「風」

けれどもし、この世に風がなかったら
すべてのいのちは、輝きを失うことでしょう。


Akemi


(このシリーズは、プロの写真家・飯島徹さんとのジョイント企画です)


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