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三日月の夜に

Story & CG -original doll - by Akemi Murata


わたしの名は、ムーン。
三日月の夜にだけ生まれる
月の分身だ。

ムーンになると
月からひょいと抜け出して
月光のスロープをすべり降り
地球という名の青い星に
降りることが出来る。

そうして、あちこち
気ままに散歩するのが
わたしのひそかな、楽しみなんだ。

幸い、この星の住人たちには
わたしのすがたは、見えないらしい。

さて、今夜はどこへ行くかな?


おや、波の音が聴こえる。どうやら海がちかいらしい。
それにしても、なんて素晴らしい眺めだろう!

海は、なんど見ても見あきない。
宇宙ひろしと言えど、こんなに美しいものを
もった星は、そうかんたんに見つかるもんじゃない。
この星に暮らす者たちが、それに気づいているかどうかは、ぎもんだが。

寄せては返す、波の音を聴きながら、しずかな夜の浜辺に腰かけて
わたしが、そんなことをひとり思っていた時だ。

つん、つん、

だれかがふいに、わたしの背中をつついた。


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