証明写真

Poem by Akemi Murata


まぎれもなく「私」ですと

小さく切りとられた四角形のなか

バストショットで宣誓する 証明写真

学生証、受験票、パスポート、免許証、履歴書.....


これまで何まい 撮っただろ

これから何まい 撮るのだろ


はじめての証明写真は

中学生になった春

まばたきしないよう

目を見ひらき

頬までひきつっていたから

セーラー服の胸ポケット

学生証の写真は

最悪だった


それから後も

手元に残したい証明写真に

ついぞ出会うこともなく

月日は流れ

また一枚


証明写真を撮る日がやって来る

五年にいちど

運転免許証更新の通知は

いつも冬

雪が舞うころポストに届く


いのちを授かった季節に

いのちの証明写真を撮る


アルバムに貼られることもなく

時のすき間に消えて行った

たくさんの証明写真たち


ひらひら蝶のように甦り 整列したら

どれくらいの長さに なるのだろう


この冬はじめて

会ってみたいと思った

小さな四角形のなか宣誓する

「私」という名の彼女たちに

今ならきっと目をそらさない



詩・村田あけみ



Comment


以前には思いもしなかったことを考えていたり、思いついたりしている自分に気づきハッとすることってありませんか?『これまでに撮った証明写真をまとめて見てみたい』なんて考えたこともなかったのに。

生きていく(年を重ねる)ってなかなか興味深いものですね。

2009.1月 村田あけみ


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