BOROBUDUR

 ジョグジャカルタから車で1時間30分。中部ジャワの険しい山や火山に取り囲まれた緑豊かな平原に、世界最大最古の仏跡ボロブドールはあります。建造は8世紀頃と言われ、19世紀初め、イギリス人が発見するまで千年もの間、土の下に眠っていました。その後15年間に及ぶ(1968年〜1983年)修復工事を終え全貌を表した遺跡には、各国からいろんな考古学者や宗教学者が訪れたものの“誰がいつ何のためにつくったのか?”いまだに謎だらけです。

 実際にボロブドール遺跡の上に立った時の感覚を、どう説明したらいいでしょう?寺院だと考えた場合、普通は“祈りの場所”があるものですが、この造形物には、そんなスペースが一切ありません。墓でもないというし…下層部から階段をのぼり回廊に埋め尽くされたレリーフ(全長5キロに及ぶ)を見ていきながらひたすらに天に向かう巨大な石のかたまりです。


 レリーフは下の方から『欲望の界』『形の界』『無形の界』となっていて、中心を占めるのは、王子として生まれたシッダールタ(釈迦)が、深く悩みながら解脱にいたる壮大な一生を描いた“石の絵巻物”です。この造形物の本当の意味は、もちろんわかりません。でも、わたしの感想(直感)は、『この建造物自体が、巨大な教典なんじゃないか?』ということでした。そう、“古代のバーチャル教典”です。当時は文盲も多かったでしょうが、どんな説法よりも、ここに立ち、登り、レリーフたちと会話しながら頂上をめざせば、何かが見えてきたはずです。

 下層部に彫られた殺戮や、人間の欲望の世界から、釈尊の人生をたどっていくと、見る者の気持ちもおだやかに昇華していきます。そして上には合計72のストゥーバ(釣鐘型で、中に仏像が鎮座している)が待っていて、このあたりから徐々に視界が広がり、頂上の大ストゥーバのところにくると、視界は360度ひらけ、心がふっと軽くなります(空にかけのぼれるような錯覚をするくらい)…見えるのは果てしなく広がる緑の大地と青い山々、それにの広がりだけでした。

 それにしてもこの造形物を考えついたのは、一体ナニモノなのでしょう!? 頂上に立ったとき、わたしにはこの石のかたまりが、なんだか宇宙船のように思えました。いまにも、全体が空に舞い上がるような…(この幻想は、帰国後もずっと心に住みついています)。
 ボロブドールの後(まだ悟りに至れない我々は)、市内にもどって美味しいインドネシアン料理の昼食(中華とタイ料理を混ぜたような)をとり、バティック(ろうけつ染め)の工房や、お店でショッピングしました。 ジャワ島のしめくくりは、市内から車で30分ほどのところにある“ロロ・ジョングラン寺院”(妖艶な処女という意味)通称“プランバナン遺跡”です。


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