冬紫陽花

fuyu-ajisai

Photo & Poem by Akemi Murata

    

   いさぎよく

  散らなくたって

  かまわない

  夢色に

  ふっくら咲いた

  雨の日を



ひしと抱きしめ 散らぬまま

それでも凛と、花は花


   


山から吹いてくる風に セピアの花房

しゃらんと鳴らし いのちの鈴音

ひびかせて 冬紫陽花は

雪に立つ


  

  ひまわり、コスモス、曼珠沙華

  過ぎゆく季節のかたわらで

  咲いては散った花たちの

  色の欠片(かけら)

  ふりそそぐ



くるくる 花の万華鏡 ふるる 花びらふるわせて

ほのかに甘くやわらかな 雨に出会えるその日まで

色を封じた白に抱(いだ)かれ 冬紫陽花は風を聴く


散らなくたって かまわない

虹色の夢 散らさずに

ひしと抱きしめ 散らぬまま

それでも凛と、花は花





Comment

ぱっと咲いてぱっと散る 桜の花に「美学」があるなら
散らずに留まり、しだいに色あせ朽ちて行く紫陽花にも

「散らない美学」があるのではないか。
そう最初に思ったのは、中学生の頃でした。

通学路の片隅で雨のなか、明かりを灯すように咲いていた紫陽花。
あの日、花を見て感じた少女の直感を、歳月が流れ過ぎたいま
ようやく詩にすることが出来ました。書かせてくれたのは

ま白い雪原に立つ「冬紫陽花」の凛とした姿と
人生のなかで流れた時間、大切な出会いや
思い出たちだったかも...しれません。


Akemi




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