Vol.1




落ちた空とコオロギ


  秋の野原に

  まあるい空が

  落ちていました

  いっぴきの

  コオロギが

  落ちた空に

  恋をしました

「きみは いつもキレイ いつもちがう いつもときめく」


飛びちる雲をそよがせて

コバルト...ブルーグレー...ピンク...
パープル...ワインレッド...

空は刻々うつろいかわり


どの瞬間の 空のことも

コオロギは 愛しました


日ごと夜ごと まあるい空によりかかり

コオロギは 歌いつづけます


その声は

空にとどいたでしょうか


ええ、きっと


コオロギの魂はいま

空といっしょにいるのですから


もし野原で

古いコンパクトを見つけたら

コオロギと空のこと

思い出してくれますか







プロの写真家、飯島徹 - Toru Iijima - さんに、はじめてお会いしたのは何年前でしょう。出会ってすぐ、『MUSHIの風景』という題名の写真集をいただきました。モノクロで、虫やカエルの写真ばかりおさめた白い本(神無書房)。けっして派手さはないけれど、そのシンプルさと、いのちのフォルムの美しさに息をのんだものです。


疲れたとき・・音楽を聞きながら・・あるいは空を見るように、
あれから、わたしは何度、その写真集を手にとったことでしょう。
徹さんの写真からは、小さな命たちへの愛があふれてきます。

写真に詩をつけてみたくなって、最近ご本人にお願いしてみたら、「よろこんで」と笑顔で応えてくださって、HP上で写真を発表することまで快く了解して下さいました。

素晴らしい写真たちを、これから少しずつご紹介できるかと思います。
(写真の持つ精神性を汚さぬよう、こころして書かなくては)


まずは、その一回目。手のひらにのる童話のような詩を書いてみました。
写真を見つめているうちに聞こえてきた物語です。

いまちょうど、庭ではコオロギが鳴いています。

-秋の宵に- Akemi



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