Ubud / Part2

3日目(午後)

 渓谷の風にふかれながら昼食を楽しんだあと、メインストリートをジャランジャラン(散歩)していると、大きな木製の動物像に出くわしました。家を造る時みたいに、像の周りには足場が組まれ、職人さんたちが作業をしています。知らなければ『大きな飾り物ね』くらいで通り過ぎるところですが、バリの文化や宗教について、少しは調べてきた私たち・・大いに興味をそそられました。

 バリには、珍しい宗教的行事やしきたりが今も生きています。バリ人は生まれた時から様々な行事を体験しますが、最後の行事つまり『葬礼』に使われるのが、この巨大な牛の像なのです。といっても、誰でもこの牛を使えるわけではありません。王族や祭司など、裕福な人が亡くなった場合にのみ作られる珍しいもの。バリ人が考える『死』は、ある意味じつにほがらかです。

 死は終末ではなく、始まりを意味します。葬式は、人間から神々に準ずる清らかな存在になるための祭りと言ってもいいでしょう。だから貧しくても、葬儀にはお金を惜しみません。家族が死ぬと遺体はいったん村の墓地に埋め、費用がたまるまで何年も待つという徹底ぶり・・準備が整うと遺体は掘り出され、あらためて火葬にふされます。

 遺体を灰にすることで死者の霊は汚れをはらえると信じている彼ら。遺体はみんなの目の前で焼かれ、灰は、海に流すそうです。あの建造中の大きな牛には、遺体を背中にのせ一緒に燃やされて、天高く御霊を運んでいく役目が待っているというわけ(ヒンズー教で“牛”はシバ神の乗り物です)。

巨大な顔の洞窟『ゴア・ガジャ』

 さて、つぎに我々が車で向かったのは、11世紀頃の古代遺跡『ゴア・ガジャ』(象の洞窟)。世界的遺跡“ボロブドール”を昨日見てきたばかりの目には、正直ちょっと貧相に映りました。でも、巨大な顔のレリーフの洞窟は小ぶりながらユニーク。すぐ横の広場にある6人の女神が彫られた浴場跡は苔むして、女神が持つ水瓶からは今も水が吹き出していました。どちらも、仏教やヒンズー教の僧が修行した場所と言われています。

 

 その後、木彫りの工房に立ち寄ったりしましたが、そろそろ旅の疲れもたまってきました。気温もかなり上がって来たので、この日は予定を切り上げてホテルへ。ところが、いざバンガローに帰ると、陽光きらめく時間がもったいない・・ひと泳ぎするために、ホテル内のプールに出かけました。

Pool Sideでリフレッシュ

 プールサイドには、ビーチチェアーに白人のカップルが、ひと組寝そべっているだけ。他には誰もいません。そんなに大きくないけれど、熱帯の木々に囲まれたプールは、自然にあふれとても快適!まるでジャングルの小さな池で泳いでいるよう・・のんびり泳いでいると疲れもほどけていくようでした。

 プールで逆に元気を取り戻した私たち。夜のウブドの町に繰り出したくなって、ホテルとメインストリートを往復するシャトルバス(ワゴン)に乗り込みました。

月明かりと幻想・・ウブドの夜

 町に着いたのが午後6時半くらい。ホテルに帰る最終便は11時ですから、約4時間たっぷりウブドの夜を楽しめます。プールで泳いでお腹もすいていたので、どこかでレゴンダンスでも見ながら食事しようと訪ねたツーリストインフォメーション。

 「食べながら見るレストランはないが、7時から目の前のシアターでレゴンダンスショーが始まりますよ」という話。時計を見ると開演まであと15分しかありません。夕食をとるか、ショーをとるか・・一瞬悩みましたが、バリに来た以上、本物のレゴンダンスとガムラン音楽は味わいたい!で、通りのスーパーマーケットにダッシュして、パンとジュースを買いシアターにかけ込みました。シアターといってもテント。中はかなり広くて400人位の観客(欧米人の観光客が多い)でぎっしりです。もう、あまりいい席はあいていませんが、何とか座って大慌てでジュースとパンを口に入れて(周りにも食べてる人がいます)2時間ほどの上演に備えました。

 さあ、いよいよ開演です!舞台のそでから続々と登場するガムラン音楽の奏者たち。簡単な編成を予想していたのですが、演奏者だけでも片側に25人くらい。両方では、50人近い大オーケストラです!それだけの人数と楽器から出てくる音ですから、演奏が始まったとたん思わず息を飲みました。『これは、すごい!』観光客気分で「食事しながら観たい」なんて言った自分が、なんだか恥ずかしくなりました。だって、そんな中途半端な芸ではありません!レゴンダンスが始まると、レベルの高さにまたびっくり。踊りも音楽も『神さまに捧げるもの』なんですね。後日わかったことですが、ウブドはバリ島の中でも一番、優秀な踊り子たちが集中しているとか・・その夜、我々が観た舞台は、おそらく最高レベルだったと思います。

 写真を撮ることも出来たのですが、2時間、写真を撮ることも忘れるほど舞台にくぎづけでした。途中から、どうしても前の方で観たくなり、前の方に移動して壁際に立ったまま最後まで観たほどです。シンコペーションの多いリズム、しだいにトランス状態に入っていくような不思議な音楽・・そういえば坂本龍一や細野晴臣、松任谷由美といった面々が、バリの音楽にひどく感銘を受けたと話しているのを聞いたことがあります。

 舞台が終わった後、心地よいリズムを感じたまま、まだ開いているレストランを探しました。欧米人の客でにぎわうシャレた店で、久しぶりに頂いた西欧料理(インドネシア風にアレンジした)は、なかなか洗練された味でした。それにしてもウブドの店は、ホテルもそうですが、どこも照明が暗く(蛍光灯の明かりはほとんど見かけない)そのため余計に、月明かりを感じることが出来ます。テラスのような席で、テーブルに置かれた蝋燭と淡い照明だけで食事をしていると、月のやわらかな光線がやさしく包んでくれました。

 旅もいよいよ終盤をむかえます。つぎは、ウブド一日観光のあと、初日の宿泊地ヌサドゥアビーチへ向かいます。観光はほとんど終わったつもりでしたが・・最後の2日間が、これまた盛り沢山なのです!

Ubud→Nusa Dwa

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