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 アイスクリーム屋さんの青い目が、まるで湖の水面のように波だったかと思うと涙があふれた。

「君は、心のどこかで、あの日のことを後悔しているね。
 サーヤが死んでしまったのは、
 外へ連れ出した自分のせいじゃないかって」

 その時、あのオルゴールの調べがひときわ高く響いて、ぼくはハッとした。

「思い出したかい?…そう、サーヤがつくった曲、
 いつも口ずさんでいたメロディーさ」


 アイスクリーム屋さんはしずかに言った。

「サーヤが死んでしまったのは、君のせいなんかじゃない。
 この音楽は、サーヤから君への贈り物なんだよ。
 一生で、いちばん楽しい日をくれた
 君への”ありがとう”なんだ」

 バサバサバサッ…その時、大きな鳥が空にはばたくような音がした。
 瞬間、目をあけていられないほどまぶしい光が、あたり一面に満ちあふれた。

 やっと目をあけた時には、アイスクリーム屋さんも馬車も、すっかり消えてしまっていた。

 けやきの葉が、さやさやと風になっているだけ・・。

 ぼくの手には、ひとつのアイスクリームが残されていた。“WING”に描き入れた模様と同じ、二枚のつばさのかたちをしたアイスクリーム…それは、まるで天使の羽のようだった。


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