Vol.3




ハエの詩




蝶のようには舞えないが

無骨な体をふるわせて

いのちのドラムを

打ち鳴らそう


祈りのような夕暮れに

ハエの羽音が詩を刻む


かつて我らは

(ちまた)にあふれ


たたかれ はらわれ きらわれて

それでも人のそばに暮らした


キレイ好きとは言わないが それならどれほど


人はキレイ


ひらひら ひらひら 

時代は移る


ハエが減るたび豊かになって

キミたちの暮らしは変わった


台所はシステムキッチン 茶の間はいつしかリビングに

あかぎれだらけの母の手は マニキュアぬったママの指


ひらひら ひらひら

時代は移る


しあわせになるため キミたちは走りつづけ

道の途中で息をきらせ ふりかえる

その顔が つらそうなのは

気のせいかい?


祈りのような夕暮れに ハエの羽音が詩を刻む


蝶のようには舞えないが

無骨な体をふるわせて

いのちのドラムを

打ち鳴らそう






Comment

今回の主役は、蝿(ハエ)です。

人気者とはとても言えない虫ですが、

この写真をはじめて見たときハッとしました。

なんて力強く、美しいフォルムでしょう。

そして、なぜか胸が熱くなりました。

写真の向こう側から、なつかしい夕げの匂いが流れてくるようです。

あかぎれの母の手も、思い出します。

子ども時代の何でもない一日の終わりにタイムスリップして

もういちど、母の手づくりの晩ごはんが食べてみたい。


Akemi

(このシリーズは、プロの写真家・飯島徹さんとのジョイント企画です)


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