Photo&Poem

悠々と

写真 Osamu Murata 詩 Akemi Murata


無限の雲があなたの上を流れ

あなたの背中はすこし

丸くなりました


でも

お父さん


その丸みは

川底でしずかに光る

石のように美しいと


わたしは思います


「夏は暑い方がいい 冬は寒い方がいい」


あなたの口ぐせを

つめたい風のなかで歌うように

真似たら


寒さまで

心地よくなるから

不思議


人生をほがらかにするマジックを

いくつも知っていて

いっぱい

教えてくれましたね


おかげで あなたの娘も

マジシャンに なれそうです


思い出の海に

悠々と釣り糸を垂らして

すき通った釣竿を手にしたまま


あなたの目が

遠く見つめているものは


何でしょう





Comment


この写真のなかのシルエットは、わたしの父です。
いっしょに出かけた旅先で、海を見つめる父を
(OsamuMurata)が写してくれました。

父はつくづく不思議な人です。
父の口から仕事のグチや、つらい体験など
いちども聞いた記憶がありません。

人なみにイヤなことも色々あったと思うのですが、
いつも無声映画のコメディアンみたいに
少しとぼけた表情で、涼しく笑っています。

そんな父も、三年前に母(父にとっては妻)
亡くしてからは、背中がすこし丸くなりました。

時折、母との思い出をたどっている
巡礼者のように見えることもあります。

それでも、淡々と自然体は変わらず
その笑顔は、ますます赤ん坊のよう・・。

父との時間がもっともっと長くつづくように
そんな祈りを込めて

「父に贈る詩」を書きました。

(1998年12月31日広島県鞆の浦にて撮影)

うえの詩とコメントを書き、ここにアップした頃は
父も元気だったのですが、1999年5月20日
心臓マヒのため突然、亡くなってしまいました。

(雲の向こうに行ってしまった父に、愛と感謝を込めて...)

-Akemi-

<その他の↓父に贈る作品> 

「降りつもった羽根」
エッセイ「海からの風」
短歌「化野の雨(あだしののあめ)
エッセイ「車内のゲーム」
詩 「風の庭師」


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