降りつもった羽根

Poem by Akemi Murata / Photo by hiroshi furukawa


 

お父さん、そこから

見えますか

 

 

三年前、先に逝った母さんに

ちゃんと会えたかなぁ


お父さん、方向音痴で

すこしドジだから

しんぱい


むかし家族旅行の旅先で、私たちを写そうと

カメラ構えてのぞいたまま後ろにさがり

池に落っこちたこと、あったよね

 


たくましくもなく、世渡り上手でもなく

スポーツマンでもなかったけれど

メガネの奧でしずかに笑ってる

あなたの眼差しが


どんな言葉よりも腕力よりも

私たちを 守ってくれました

 


ハンカチ1枚あれば、子どもを退屈させない名人でしたね

お父さんの手のなかでヒラヒラ舞う、白いハンカチ

大好きでした


連れて行ってもらった映画館の暗闇で

いくつ夢を見たでしょう

 

子どもの頃、家のなかで吸い込む空気には

あなたの愛する音楽が

いつも溶けていました


この世にある美しいもの、不思議なもの

かけがえのないもの

いっぱい教えてくれて、アリガトウ


あなたが降らせてくれた思い出の羽根

いちまい、いちまい降りつもって

心のクッションになってるから

どんなにつらくても

 

笑顔になれるよ

 


おぼえてる?

わたしがジューンブライドになった日

花嫁姿できちんと挨拶しようと姿勢正したら

困った顔して、あわてて逃げ出したでしょ

それでも

「おまえが選んだ人に間違いはない」と

いちばん応援してくれたのは

お父さんでした

 


いつか、あなたのように

大きな人になれるでしょうか


また会う日まで、わたしも白い羽根を

いちまい、いちまい、降らせましょう


いつか

降りつもった羽根あつめて

飛んでいくから

 

待っていてね

 

 




詩・村田あけみ

背景写真・古川廣


Comment


1999年5月20日に他界した

父に捧げます。

お父さん、ありがとう

あなたの娘に生まれて幸せでした。


父の一周忌に寄せて、2000年春

「降り積もった羽根」の一部を、書道家・香葉が
ちぎり絵と書にしてくれました。

(クリックしたら大きい画面でご覧になれます)

その他の↓父に捧げる作品

悠々と(ポエム)
海からの風(エッセイ)
化野の雨(短歌)
車内のゲーム(エッセイ)



<--Back to Home

<--絵本Cafeへもどる