『バクダッド・カフェ』も忘れられない映画です。初公開は1989年3月。渋谷の公園通りにあったミニシアター、シネマライズで封切られ、17週間(約4か月)のロングラン公開。その後のミニシアターブームを生み出したきっかけの一本かもしれません。アメリカを舞台にドイツとアメリカの資本で作られていますが、監督も出演者も特に有名ではなく、ヒットするような派手な要素は何もありませんでした。けれど何か、心に沁みるんですよね。
アメリカ旅行中に夫と喧嘩をし車を降りてしまったドイツ女性のヤスミン(ジャスミン)が『バクダッド・カフェ』に逗留し、いつも不機嫌な女主人のブレンダと、このアメリカの砂漠地帯にあるさびれた『バクダッド・カフェ』(バー&モーテル&ガソリンスタンド)を舞台に心が少しずつ通い合っていきます。何ひとつ共通点のない(国籍も性格も習慣も肌の色もちがう)中年女性ふたりと、変わり者ばかりが集う常連客たち…..けれどカフェに流れていた澱んだ空気はヤスミンの存在に癒され少しずつ変わっていくのです……その独特の世界観の底に通奏低音のように流れるジェヴェッタ・スティールが歌うテーマ曲「コーリング・ユー」がなかったら、この映画がこれほどまで受け入れられたかは疑問ですが、女性には特に心に沁みる映画だと思います。