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映画レビュー『ONCE ダブリンの街角で』

『ONCE ダブリンの街角で』2007年公開アイルランド映画。

『映画と音楽の関係』で思い出す名作は数限りなくアルけれど、何度も観たくなる映画となると結構すくない。そんな中、この映画はwowowでたまたま観て気に入り、いまも消さずに残してミュージックビデオのように流しながら作業したりしている。そういう意味ではちょっと稀有な音楽映画かもしれない。華やかなストーリー展開もなく、ローコストで有名俳優も一切出ていない地味~な映画なのだけれど。


ストリート・ミュージシャン “ハンサード”(男)とチェコ系移民 “イルグロヴァ”(女)が、ダブリンの街角で出会い、音楽を通して心を通わせていく…いわゆるラブストーリーという設定はあるものの、むしろ主役は『音楽』そのものかもしれない。主演の2人も俳優ではなくプロのミュージシャン。 ジョン・カーニー監督&脚本も元ベーシスト。映画の予算も少なく監督も役者も有名ではなかったのに、2007年に全米では2館から公開スタート。クチコミで話題になり、140館まで劇場数を増やした。
サウンドトラックは全米チャートで2位を獲得。公開された2007年のインディペンデント・スピリット賞の外国映画賞を受賞。ハンサードとイルグロヴァの曲『フォーリング・スローリー(英語版)』Falling Slowly は第80回アカデミー賞歌曲賞まで受賞した上、サウンドトラックはグラミー賞にノミネートされた。
ハリウッド映画のようにハンサムな俳優も、モデルのような女優も出てこない(ラブシーンもない)けれど、そこが何とも初々しく切なく音楽のように沁みてくる。

映画レビュー『セントラルステーション』

1998年公開・ブラジル映画

ロード・ムービー(旅する映画)は好きなジャンルですが、中でも心に残っている一本がこちら。リオ(ブラジル)中央駅構内で手紙の代書人(字の書けない貧困層を相手に)している元教師の中年女性ドーラの元に、ある日九歳のジョズエという息子を連れた母親が客として現れます。彼女は別れた夫(ジョズエの父)との復縁を望む手紙をドーラに託しますが、その直後に事故で死亡。母を亡くし駅で寝泊まりするようになったジョズエ(少年)を仕方なく家に連れ帰るドーラでしたが・・・けっして彼女は親切な優しいおばさんではなく、郵便料だけ受け取り手紙を勝手に破棄するようなイヤ~なおばさんだったのです。

さて、そんなドーラがなぜ?やっかいな旅(リオから何千キロも離れた)少年ジョズエの父親捜しに出るハメになるのか?ロードムービーではその理由付けに説得力が必要な訳ですが(観客も旅に連れ出さないとイケナイ)その辺りも実に見事。不幸な境遇の子供が出ると、お涙ちょうだいの映画?って思いがちですが…全然違います。ブラジルが抱える現実や問題、たとえ子供であろうと自分の力で生き抜いていくしかないという厳しい現実に圧倒されつつ、それでも思わぬところから救いの手が出てほっとしたり….その後の展開はネタバレになるので書くのはよしましょうね。

ゴミゴミしたリオから荒野のような地方へ二人を乗せバスは走り出します・・・母を失ったジョズエも可哀そうですが、それ以上に、未来への希望を失っていたドーラの孤独や切なさがあぶり出されてきます。少年を救う旅は結局、彼女自身を救済する旅だったのかもしれません。ラストもいいですよ。

リオ出身のウォルター・サレス監督の出世作。1996年、サンダンス・NHK国際映像作家賞(脚本を審査する)を受賞し制作され、1998年第48回ベルリン国際映画祭の金熊賞(最優秀作品賞)、銀熊賞(主演女優賞)及びエキュメニカル審査員特別賞、アメリカ第56回ゴールデングローブ賞で最優秀外国語映画賞受賞など、各国で様々な賞を受賞した。

映画&音楽『ベニスに死す』

映画と音楽の関係
『ベニスに死す』1971年イタリア・フランス合作

オリジナルの映画音楽ではなく、もともとあった音楽を映画に使用するケースも(クラシック音楽とか)多いですよね。そんな中で特に成功していると思った一本にルキノ・ヴィスコンティ監督の映画『ベニスに死す』があります。原作はドイツ文学者トーマス・マンの同名小説。私は本を先に読んでいたので、ちょっと映画で登場する美少年に違和感を覚えたりもしましたが(笑)
さすがはビスコンティ監督。小説では『作家』だった主人公を『作曲家』に変え、グスタフ・マーラーの交響曲第5番・第4楽章アダージェットを使うことによってこの難しい小説の世界観を、水面の揺らめきと音楽で織りなすように浮かび上がらせていました。疫病が流行っている設定のベニスを舞台に、老いを白粉で隠し少年の姿を追い求め彷徨う老作曲家….ベニスの迷路や運河から陶酔した美と死の香りまで漂ってくるようでした。日本では、この映画でマーラー人気に火がついたともいわれています。

映画&音楽『ニューシネマパラダイス』

映画と音楽の関係
『ニューシネマパラダイス』1988年イタリア映画。

やっぱり映画音楽を語る上で、この作品は外せないのでもういちどアップしますね。エンニオ・モリコーネの名曲!理屈ぬきに心を揺さぶる旋律(特にこの『愛のテーマ』)が素晴らしい。この映画もまた、エンニオ・モリコーネの音楽がなければこれほど愛されたか疑問です。

監督はジュゼッペ・トルナトーレ。人気の映画なので後に『ニューシネマパラダイス完全版』というのも発表されたりDVD販売されていますが、うーん、私はおすすめできません(-_-;) 要するに短縮版「劇場公開版」と、長尺版「ディレクターズカット版(完全オリジナル版)」の両方があるわけですが、両者は内容も異なり長尺版にはラブシーンやエレナとの後日談が加わり、劇場公開版123分が173分に拡大されているというわけです。ま、人それぞれ好みはあると思いますが….劇場公開版がやはりベストに思えます。

余談ですが、映写技師アルフレードと少年トトを人形にしたこともあり(人形は現在、湘南にあるミニシアター『シネコヤ』さんに住んでます♪)個人的により印象深い映画になりました。
↓『ニューシネマパラダイス』より『愛のテーマ』

映画レビュー『八月の鯨』

『八月の鯨』1987年/アメリカ映画

けっして派手な映画でもドラマティックな要素もないけれど、しみじみ沁みる….そんな映画があるものです。最初にどこで観たか覚えていないのですが、その後も繰り返し観ました。ベティ・デイビス、リリアン・ギッシュという往年の2大女優が人生の晩年を迎えた姉妹役を演じています。監督は『if もしも‥‥』の名匠リンゼイ・アンダーソン。

アメリカの東海岸、メイン州の小さな島にある別荘(小屋のような家)が舞台。そこで毎夏を過ごしている年老いた姉妹リビーとセーラ(サラ)は性格が真逆なんですよね。いつも苦虫を噛み潰したように不機嫌なリビーと、どこか夢見る少女のような愛らしさを残したセーラ。ふたりの会話に笑ったり、切なくなったり悲しくなったり….ああ、自分は年取ったら、どんなおばあちゃんになれるのかな?って考えたものです。小屋の近くの島の入り江には8月になると鯨が現れ、幼い頃ふたりは良く見に行ったから『八月の鯨』それは何を象徴していたのでしょう。年を重ねてまた観てみたい映画です。

個人的には、ニューヨークに二年間暮らしていた頃、カナダの方までドライブした時にメイン州のこの海沿いの風景に似たところも走ったので懐かしい(赤毛のアンに登場する風景とも重なります)老姉妹と、彼女たちを取り巻く3人の老人たちだけが登場人物。まるで質の高い舞台劇を観ているような感覚にもなるのは演技力と脚本がいいからでしょうね。本作が遺作となったリリアン・ギッシュ(セーラ役)は、カンヌ国際映画祭特別賞を受賞。1988年岩波ホールで公開され31週のロングランヒットを記録したそうです。まだの方は是非♪